ごく普通の人々がごく普通に過ごす平凡な日常。その日々の中に起こるありがちなハプニングをきっかけに、その普通の人々が心の中に隠している過去や感情がふと垣間見れる。そんな芝居が魅力のらくだ工務店の今回の舞台は、銭湯。
先代が亡くなってしばらくたち、遺品の整理をしようと兄の信吾にせまるフクコ。フクコとその夫一樹、銭湯の常連の売れない芸人鉄平は幼馴染。遺品から出てきた一つの箱をきっかけに幼馴染達が心の中に包み隠していた秘密がチラッと見えてしまいます。
鉄平がいいます。「誰だって、人に言えない秘密があるだろ?墓の中まで持っていくしかないような秘密が。」でも、そんな鉄平が大事に守ってきた秘密は、30年以上の時を経て、端から見るとガラクタのようになってしまってました。そして、「墓の中まで持って行くしかない」この言葉には2つの意味があることに気づかされます。一つはもちろん、決して他人に明かすことは出来ないという意味。もう一つは、残しておいても他人には価値がないという意味。それはあたかも、押入れにあった先代の謎の遺品のように。
でも、そんな端から見るとくだらない意味のない秘密を心のよりどころにして生きてきた鉄平が実にいとおしく見えるのです。
今ちょうど、政治が世の中を大きく変えようとし、それによるいろいろな軋轢がニュースになっていますが、人は時に、他人から見るとホントどうでもいいようなものを心の支えに生きていることがあるということは理解しないといけないでしょう。
らくだ工務店 第17回公演「黄色い湯気」は下北沢シアター711で25日まで公演中。チケットはまだあるそうです。
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