2009年02月15日

「チョコレイト・ディスコ」に見るPerfumeの楽曲の魅力その1

昨年4月にNHKのトップランナーにPerfumeが出演した時に、次のような会話がありました。

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のっち「ひとつの物語を提供するというよりは、この曲で人それぞれいろいろ感じるものが
    あっていいと思うという考えなので」
箭内道彦「だから聞く側がクリエイティブになれるんですね、Perfumeの曲は。聞く側がちゃ
     んとイメージを膨らませて聞くことによってどんどん楽しくなっていくというか、
     どんどん切なくなっていく」
...
かしゆか「中田さんは歌詞がすごく世界観があって、恋愛としても取れるけど、人生としても
     取れたりとか、二面性をもってたり、あとは、キミとか僕で表現しているから、男
     の人も感情移入しやすかったり、でも女の人の歌にも聞こえたりっていうのがすご
     くいろいろあって」
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MCの箭内さんはクリエーターなので「クリエイティブになれる」という表現を使っていますが、多くの一般人はたいしたクリエイティビティを持っているわけではありません。ではそういう人たちはどうするかというと、自分の経験を重ねることで歌われていないイメージを補完するのです。

Perfumeファンの多くが熱病に冒されたかのように夢中になり、熱く語りたがる理由の一つがここにあると思います。

具体例を挙げて説明することを考えると「チョコレイト・ディスコ」は、ちょうどよい題材ですので、これで説明してみましょう。

まずは、「チョコレイト・ディスコ」の歌詞を見てみましょう。この曲は、描かれている情景をイメージしながら見てください。

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「チョコレイト・ディスコ」
作詞中田ヤスタカ
作曲中田ヤスタカ

チョコレイト・ディスコ(くりかえし)

計算する女の子
期待してる男の子
ときめいてる女の子
気にしないふり男の子

バレンタインが近づいて
デパートの地下も揺れる
計算する女の子
期待している男の子

お願い 想いが届くようにね
とっても 心こめた甘いの
お願い 想いが届くといいな
対決の日が来た

チョコレイト・ディスコ(くりかえし)

計算する女の子
期待してる男の子
ときめいてる女の子
気にしないふり男の子

お願い 想いが届くようにね
とっても 心こめた甘いの
お願い 想いが届くといいな
なぜか 教室がダンスフロアに

チョコレイト・ディスコ(くりかえし)
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この歌詞、バレンタインデー間近になって、なんとなくそわそわした教室の雰囲気を描いているわけですが、実はあまり具体的なことは言っていません。

まず、登場人物が「男の子」「女の子」と抽象的に描かれています。この「男の子」「女の子」が「男の子達」「女の子達」と集団を指しているとも、あるいは特定の人物を指しているともどちらとも取れます。また、仮に特定の人物を指しているとして、それが自分自身ともとれる
し第三者の視点とも取れます。

また、「気にしないふり男の子」とありますが、何を気にしてるのかが語られていません。例えば「好きな女の子が自分にチョコをくれるのか」とも考えられるし「何人からチョコをもらえるか」とも考えられるし「チョコを誰からももらえそうにないこと」とも考えられます。

それ以外にも「対決の日」とありますが、対決の意味も、ドリカムの「決戦は金曜日」ばりにチョコレートを渡すことを言っているとも取れるし、あるいは相手の男子が人気があって、ライバルがいるようにもとれます。

みなさんはどのようにイメージしたでしょうか。

おそらく10人に聞いて10通りの答えが返ってくるような気がします。そして、そのイメージはもしかしたら、自分自身の学生時代の思い出がベースになってないでしょうか。これが、上でいった「自分の経験を重ねることで歌われていないイメージを補完する」ということなのです。そう考えると、この曲が女の子に人気なのもわかります。

しかもこの歌詞が秀逸なのは、具体的なことが描かれていないので、バレンタインデーによい思い出のない人、例えば、今まで本命チョコをもらったことないモテナイ君でも、「気にしないふり男の子」で感情移入できる仕組みになっているところです。さらに視点が一人称か三人称かあいまいですので、蚊帳の外のモテナイ君は三人称でみることが来ます。彼にとっては、この曲は苦い思い出の曲に聞こえるでしょう。

このように、どうとでも取れる歌詞によって、リスナーはまるで自分の経験を元にした歌を歌われているような錯覚を覚えるのです。

さて、長くなったのでいったん終わります。ここまで歌詞について書いてきましたが、この曲は歌詞だけでなくその構成にも秘密があると私はおもっています。そしてこの人も同じことを考えたんだろうなとも。

その人の名は、MIKIKO先生!

次回に続く。(ホントか?)

(2011/2/14 追記)2年もお待たせしましたが、その2を書きました。「チョコレイト・ディスコ」に見るPerfumeの楽曲の魅力その2

Backup

「チョコレイト・ディスコ」の歌詞がどれだけ抽象的かは、バレンタインの定番曲「バレンタイン・キッス」と比べてみるとよくわかります。面倒なので歌詞は載せないので、こちらを見てください。

http://www.utamap.com/showkasi.php?surl=55175

説明不要ですよね。いかにも秋元康的な男の子向けの歌詞です。
posted by nanno at 03:31| Comment(0) | TrackBack(0) | Perfume | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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