2016年10月22日京セラドーム。Perfume 6thツアー「COSMIC EXPLORER」DOME EDiTIONの初日。
私はその前に北米ツアーのニューヨーク公演を見ていたので、それをベースにしたセトリになるんだろうなと公演前に予想していた。実際前半は、多少の曲の入れ替えはあったものの、ほぼその予想が当たっていた。「Baby Face」が終わり、ステージが暗転。
"「TOKIMEKI LIGHTS」はなしで「STORY」にいくのかな"
とぼんやり思っていたら(北米ツアーでは「TOKIMEKI LIGHTS」はやってなかったので)、今までの「STORY」とは違った同期の外れたアナログ波TVのような映像が流れる。
”「STORY]の演出変えたのかな”
と思っていると、いつの間にかセンターステージを包み込むように現れたアミッドスクリーンに文字が浮かび上がる。[music by 中田ヤスタカ]
"えっ、えっ、「STORY」じゃないのか!"
今まで聞いたことのない曲をBGMにスクリーンには3人の3Dスキャンデータをもとに作ったモノクロのCGが次々と映し出される。続いて風船を持ったモノクロながら見覚えある3人の画像。そう、2010年の初東京ドーム公演で演じられた「Perfumeの掟」の時に使われた映像だ。
”これは何が始まったんだ?”
目の前で何が繰り広げられようとしているのか呆然としていると、3人の声が流れてくる
”……て ……のおきて Perfumeの掟”
いや、まじでぞぞぞぞわーっと鳥肌が立ちまくりましたね。
「Perfumeの掟」といえば、2007年の秋から年末のカウントダウンライブにかけて演じられた初代のものとそれをリニューアルして2010年の東京ドーム公演で演じられたダンスパフォーマンス作品。Perfumeのライブでは中間にコンセプチュアルなパフォーマンスを行うことが多いが「Perfumeの掟」はその代表作品といっていい。
と書いてて改めて気づいたが、2007年の秋といえば「ポリリズム」でブレイクした直後、2010年の東京ドームは結成10周年記念のライブとPerfumeの重要な節目に演じられてきたのが「Perfumeの掟」といえる。加えてとても気になったのが、その後のMCの時あ〜ちゃんが観客に対して「Perfumeの掟」楽しめた?という感じの質問をして歓声が上がったのを聞いて「先生よかったね」とライブの真っ最中にステージの上からMIKIKO先生に語り掛けたことだ。確か2007年の最初の「Perfumeの掟」はMIKIKO先生の希望で入れたようなことを言ってた記憶があるので、それとあ〜ちゃんの言葉を合わせて考えると今回ドームエディションで「Perfumeの掟」を入れたのはかなりMIKIKO先生の意志が入っているのではないか。
では、なぜ今「Perfumeの掟」なのだろうか。
それを考えるために2016年版「Perfumeの掟」の内容をざっとさらっておきたい。これを書いている時点で、京セラドーム2公演とナゴヤドーム2公演の計4回見ているのだが、その記憶を頼りに続きをみていこう。
「Perfumeの掟」とタイトルが示された後、3人が登場。そしてアミッドスクリーンには過去のライブツアーで演じられたコンセプト作品の映像が映し出される。3人は1人づつそれに合わせてダンスをする。まずは2012年のJPNツアーで演じられた「JPNスペシャル」をのっちが、次に2009年の「直角二等辺三角形」ツアーで演じられた「edge」をあ〜ちゃんが、そして2010年の東京ドームの「Perfumeの掟」の「10人のかしゆか」をかしゆかが。
そのパフォーマンスのバックにはそれぞれの作品のキーワードが3人のナレーションで流れる。「JPNスペシャル」では「いま私たちにできること」「edge」では「だれだっていつかは」「Perfumeの掟」では「どんな状況もプラスに変える」。この「Perfumeの掟」のものだけは、当時のパフォーマンスの中では使われてない。作品の制作過程でMIKIKO先生が3人に「Pefumeの掟」を考えてきなさいという宿題を出し、かしゆかがその答えとして発表したものだ。
ちなみにその時の3人の答えは
あ〜ちゃん: 黒髪、美白、前向き、夢追い人、アイドル
のっち : 信じること、信じ合うこと、信じた道を進むこと
かしゆか : どんな状況もプラスに変える、楽しむ気持ち、妥協しない心
だった。
結局は作品には使われてないので本来は我々ファンは知る由もなかったはずなのだが、NHKのドキュメンタリーでその様子が放送されたので広く知られている。このように、過去のライブツアーで発信してきたメッセージを振り返るようにパフォーマンスは進んでいくが、突然暗転する。3人は打ちのめされ壊れたロボットのようになる。そして3人の声
「息を合わせて」
でダンスが再開する。ここは2010年版の「Perfumeの掟」とそっくりそのままだ。ダンスが終盤にかかる中で、SEとしてコラージュのような3人のナレーションが流れる。その中で最後に流れ、一番はっきり聞こえる言葉が
「信じた道を進むこと」
のっちの考えた「Perfumeの掟」だ。
そして3人がステージの中央に集まりマネキンのポーズを取りパフォーマンスが終わる。そのマネキンのポーズがやはり2010年版のエンディングと同じポーズだ。
この2016年版「Perfumeの掟」は何を伝えようとしているのだろう。私は、これはMIKIKO先生から3人へのメッセージではないかと感じた。それは上で書いたパフォーマンス中に流れるナレーションをピックアップしてみるとわかるような気がする。
「いま私たちにできること」
「だれだっていつかは」
「どんな状況もプラスに変える」
「息を合わせて」
「信じた道を進むこと」
映画「WE ARE Perfume」でご存知の通り、Perfumeは2014年のWorld Tour 3rdの打ち上げの時に、「Madison Square Garden 2daysをやる」という次の目標を公言した。ところが現時点ではその目標にはまだまだ遠く及ばない。MSGを目指すことについては、アリーナツアーの途中からMCで触れるようになってきてたが、目標までの遠さに怯んでるかのようなMCをする公演もあった。何よりも8月の北米ツアーでそれをいやがおうにも実感させられてたはずだ。
考えてみると、Perfumeは頑張って手を伸ばせばなんとか届くくらいの目の前の目標をひとつづつ進んできたグループで、大きな目標を公言して何年もかけて実現していくというのは今までなかったことだ。それゆえ、ツアー千秋楽の打ち上げの勢いで言ってしまったもののあまりの目標への距離に呆然としてしまっている状態かもしれない。
そういえば今回のドームエディションではここ何年も言わなくなっていた「私たちを見捨てないで応援してください」というあ〜ちゃんのMCが復活しててちょっと驚いた。
そういう3人にMIKIKO先生が、いま自分たちができることを息を合わせてやって、信じた道を進めば、どんな状況もプラスにしていくことができるよというエールを送っているのではないだろうか。あるいは目標への遠さから気持ちが怯んでる3人に、今までのPerfume流、正にPerfumeの掟を思い出せというメッセージなのかもしれない。
そしてDome Editionのセットリストは「Perfumeの掟」の後に「FLASH」と「Miracle Worker」と続く。
「FLASH」は映画「ちはやふる」の主題歌。映画の登場人物のかるた部の大江 奏がちはやふるの意味を「ちはやぶるは勢いの強いさまそしてその勢いがただ一点に集中している状態」と説明している。ネットを探してたら映画ではなくアニメ版のその部分のセリフがあったので使わせてもらうと
“荒ぶる”が悪い神の力なら“千早振る”は正しい神の力です。
どちらも勢いの強さをあらわすものの、その性質は全く違います。
“荒ぶる”はバランスの悪いぐらぐらな回転だとするなら
“千早振る”は高速回転するまっすぐな軸のコマ。
なにが触れてもはじきかえされる安定した世界で、
まるで止まっているかのように見えながら
前後左右上下、どこにも偏りなく力が集中している状態
そしてそんなちはやぶるな「FLASH」に続くのが「Miracle Worker」。この2曲のキーワードを先ほどの「Perfumeの掟」のナレーションにつなげてみよう。
「いま私たちにできること」
「だれだっていつかは」
「どんな状況もプラスに変える」
「息を合わせて」
「信じた道を進むこと」
「ちはやぶる(勢いを一点に集中させて)」
「起こせミラコゥ」
この並び、偶然にしては出来すぎではないだろうか。このパート3曲で1つのMIKIKO先生から3人へのメッセージなのだろう。